経文 二


観音経

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観音経(かんのんきょう)(全文)

妙法蓮華経 観世音菩薩普門品[第二十五]

妙法蓮華経 観世音菩薩普門品[第二十五] 
みょうほうれんげきょう かんぜおんぼさつふもんぽん[だいにじゅうご]



爾時無尽意菩薩。則従座起。偏袒右肩。合掌向仏。而作是言。
にじむじんにぼさつ。そくじゅうざき。へんだんうけん。がっしょうこうぶつ。にさくぜごん。


世尊。観世音菩薩以何因縁。名観世音。
せそん。かんぜおんぼさついがいんねん。みょうかんぜおん。


仏告無尽意菩薩。
ぶつごうむじんにぼさつ。

善男子。若有無量百千万億衆生。受諸苦悩。聞是観世音菩薩。一心称名。観世音菩薩。即時観其音声。皆得解脱。
ぜんなんし。にゃくうむりょうひゃくせんまんおくしゅじょう。じゅしょくのう。もんぜかんぜおんぼさつ。いっしんしょうみょう。かんぜおんぼさつ。そくじかんごおんじょう。かいとくげだつ。


若有持是観世音菩薩名者。設入大火。火不能焼。
にゃくうじぜかんぜおんぼさつみょうしゃ。せつにゅうだいか。かふのうしょう。


由是菩薩威神力故。若為大水所漂。称其名号。即得浅処。
ゆぜぼさついじんりきこ。じゃくいだいすいしょひょう。しょうごみょうごう。そくとくせんしょ。

若有百千万億衆生。為求金。銀。瑠璃。車渠。瑪瑙。珊瑚。琥珀。真珠等宝。入於大海。仮使黒風吹其船舫。飄堕羅刹鬼国。其中若有乃至一人称観世音菩薩名者。是諸人等。皆得解脱羅刹之難。
にゃくうひゃくせんまんおくしゅじょう。いぐこん。ごん。るり。しゃこ。めのう。さんご。こはく。しんじゅとうほう。にゅうおだいかい。けしこくふうすいごせんぼう。ひょうだらせつきこく。ごちゅうじゃくうないしいちにんしょうかんぜおんぼさつみょうしゅ。ぜしょにんとう。かいとくげだつらせつしなん。

以是因縁。名観世音。
いぜいんねん。みょうかんぜおん。

若復有人。臨当被害。称観世音菩薩名者。彼所執刀杖。尋段段壊。而得解脱。
にゃくふうにん。りんとうひがい。しょうかんぜおんぼさつみょうしゃ。ひしょしゅうとうじょう。じんだんだんえ。にとくげだつ。



若三千大千国土満中。夜叉羅刹。欲来悩人。聞其称観世音菩薩名者。是諸悪鬼。尚不能以悪眼視之。況復加害。
にゃくさんぜんだいせんこくどまんちゅう。やしゃらせつ。よくらいのうにん。もんごしょうかんぜおんぼさつみょうしゃ。ぜしょあくき。しょうふのういあくげんじし。きょうぶかがい。



設復有人。若有罪。若無罪。丑械枷鎖。検繁其身。称観世音菩薩名者。皆悉断壊即得解脱。
せつぶうじん。にゃくうざい。にゃくむざい。ちゅうかいかさ。けんげいごしん。しょうかんぜおんぼさつみょうしゃ。かいしつだんえそくとくげだつ。




若三千大千国土満中怨賊。有一商主。将諸商人。齋持重宝。経過険路。其中一人。作是唱言。諸善男子。勿得恐怖。汝等応当一心称観世音菩薩名号。
にゃくさんぜんだいせんこくどまんちゅうおんぞく。ういちしょうしゅ。しょうしょしょうにん。さいじじゅうほう。きょうかけんろ。ごちゅういちにん。さぜしょうごん。しょぜんなんし。もつとくくふ。にょとうおうとういっしんしょうかんぜおんぼさつにょうごう。


是菩薩。能以無畏。施於衆生。汝等若称名者。於l此怨賊。当得解脱。
ぜぼさつ。のういむい。せおしゅじょう。にょとうにゃくしょうみょうしゃ。おしおんぞく。とうとくげだつ。


衆商人聞。倶発声言。南無観世音菩薩。
しゅうしょうにんもん。ぐほっしょうごん。なむかんぜおんぼさつ。


称其名故。即得解脱。
しょうごみょうご。そくとくげだつ。


無尽意。観世音菩薩摩訶薩。威神之力。巍巍如是。
むじんに。かんぜおんぼさつまかさ。いじんしりき。ぎぎにょぜ。


若有衆生。多於婬欲。常念恭敬観世音菩薩。便得離欲。
にゃくうしゅじょう。たおいんよく。じょうねんくうぎょうかんぜおんぼさつ。べんとくりよく。

若多瞋恚。常念恭敬観世音菩薩。便得離瞋。
にゃくたしんい。じょうねんくぎょうかんぜおんぼさつ。べんとくりしん。


若多愚癡。常念恭敬観世音菩薩。便得離癡。
にゃくたぐち。じょうねんくうぎょうかんぜおんぼさつ。べんとくりち。


無尽意。観世音菩薩。有如是等大威神力。多所𩜙益。
むじんに。かんぜおんぼさつ。うにょぜとうだいいじんりき。たしょにょうやく。


是故衆生。常応心念。
ぜこしゅじょう。じょうおうしんねん。


若有女人。設欲求男。礼拝供養観世音菩薩。便生福徳智慧之男。
にゃくゆうにょにん。せつよくぐうなん。らいはいくようかんぜおんぼさつ。べんしょうふくとくちえしなん。


設欲求女。便生端正有相之女。宿植徳本。衆人愛敬。
せつよくぐうにょ。べんしょうたんしょうゆうそうしにょ。しゅくじきとくほん。しゅうにんあいきょう。

普門品:法華経の第二十五品を言い、観音経の事を言う。観音が衆生の諸難を救い、その願いを満足させ、あまねく教化することを説いている。

[読み下し文]
爾(そ)の時、無尽意菩薩、即ち座より起(た)ちて、偏(ひとえ)に右の肩を袒(あらわ)にし、合掌し、仏に向かいたてまつりて、是の言(ことば)を作(な)さく。
※無尽意菩薩:道を求めて飽くなき修行者の名。

「世尊、観世音菩薩は何の因縁を以てか観世音と名(なづ)くるや」と。


仏、無尽意菩薩に告げたまわく、


「善男子、若し無量百千万億の衆生有りて諸の苦悩を受けんに、是の観世音菩薩を聞きて、一心に名を称せば、観世音菩薩、即時(ただち)に其の音声を観じて、皆解脱することを得せしめん。
※善男子:仏法に帰依した男子。※無量:量の計り知れない程多いこと。

若し是の観世音菩薩の名を持つこと有らん者は、設(たと)い大火に入るとも火も焼くこと能わじ。


是の菩薩の威神力に由るが故に。若し大水に漂わされんに、其の名号を称せば、即ち浅き処を得ん。



若し百千万億の衆生有りて、金・銀・瑠璃・車梁・瑪瑙(めのう)・珊瑚・琥珀・真珠等の宝を為(もっ)て大海に入らんに、仮使(たとい)黒風其の船舫(せんぼう)を吹きて、羅刹鬼の国へ飄堕せんも、其の中に若し乃至一人有りて観世音菩薩の名を称せば、是の諸人等皆、羅刹の難を解脱することを得ん。
※車渠:正しくは石偏:シャコ貝。※黒風:暴風。※飄堕:漂着。

是の因縁を以て観世音と名く。


若し復(ま)た人有りて、当(まさ)に害せらるべきに臨み、観世音菩薩の名を称せば、彼の執(と)れる所の刀杖尋(にわか)に段々に壊(お)れ、解脱することを得ん。


若し三千大千国土に中に満てる夜叉・羅刹、来たりて人を悩まさんと欲んに、其の観世音菩薩の名を称するを聞かば、是の諸の悪鬼、尚悪眼(あくげん)を以て之を視ることすら能わじ、況んや復(また)害を加えんをや。
※三千大千国土:世界が千個集まった小千国土の千倍のさらに千倍の世界。広大な世界。

設(たと)い復(また)人有りて、若くは罪有るにもあれ、若くは罪無きにもあれ、丑械・枷鎖其の身を検繁(けんげ)せんに、観世音菩薩の名を称せば、皆悉く断壊(だんえ)して、即ち解脱することを得ん。
※丑(正しくは丑に木偏)械:ちゅうかい。手かせ、足かせ。※枷鎖:かさ。「かせ」と「くさり」首かせ。※検繁(けんげ):拘束。


若し三千大千国土に満てる怨賊あらんに、一の商主有りて、諸の商人を将(ひき)い、重宝を齋持(さいじ)して、険路を経過(きょうか)せば、其の中に一人是の唱言(しょうごん)を作(な)さん、『諸の善男子、恐怖することを得る勿れ、汝等応当に一心に観世音菩薩の名号を称すべし。



是の菩薩は能く無畏を以て衆生に施したまう。汝等若し名を称せば、此の怨賊より当に解脱することを得べし』。



衆(もろもろ)の商人聞きて倶(とも)に声を発(あ)げて『南無観世音菩薩』と言わん。


其の名を称するが故に、即ち解脱することを得ん。



無尽意よ、観世音菩薩・摩訶薩は威神の力の巍巍(ぎぎ)たること是(かく)の如し。



若し衆生有りて婬欲多からんに、常に念じて観世音菩薩を恭敬(くぎょう)せば、便(すなわ)ち欲を離るることを得ん。


若し瞋恚(しんに)多からんに、常に念じて観世音菩薩を恭敬せば、便ち癡を離るることを得ん。


若し愚痴多からんに、常に念じて観世音菩薩を恭敬せば、便ち癡を離るることを得ん。



無尽意よ、観世音菩薩は是の如き等の大威神力有りて、𩜙益する所多し。


是の故に衆生、常に心に念ずべし。



若し女人有りて設し男を求めんと欲し、観世音菩薩を礼拝し供養せば、便ち福徳・智慧の男を生まん。



設し女を求めんと欲せば、便ち端正有相の女の、宿(むかし)徳本を植えて衆人に愛敬せらるるを生まん。

無尽意。観世音菩薩。有如是力。若有衆生。恭敬礼拝観世音菩薩。福不唐捐。
むじんに。かんぜおんぼさつ。ゆうにょぜりき。にゃくゆうしゅじょう。くうぎょうらいはいかんぜおんぼさつ。ふくふとうえん。


是故衆生。皆応受持観世音菩薩名号。
ぜこしゅじょう。かいおうじゅじかんぜおんぼさつみょうごう。


無尽意。若有人。受持六十二億恒河沙菩薩名字。復尽形供養飲食。臥具。医薬。於汝意云何。
むじんに。にゃくゆうにん。じゅじろくじゅうにおくごうがしゃぼさつみょうじ。ぶうじんぎょうくようおんじき。えふく。がぐ。いやく。おにょういうんが。

是善男子。善女人。功徳多不。
ぜんなんし。ぜんにょにん。くどくたふ。

無尽意言。甚多世尊。
むじんにごん。じんたせそん。

仏言。若復有人。受持観世音菩薩名号。乃至一時礼拝供養。是二人福。正等無異。於百千万億劫。不可窮尽。
ぶつごん。にゃくぶうにん。じゅじかんぜおんぼさつみょうごう。ないしいちじらいはいくよう。ぜににんふく。しょうとうむい。おひゃくせんまんおくごう。ふかぐうじん。


無尽意。受持観世音菩薩名号。得如是無量無辺。福徳之利。
むじんに。じゅじかんぜおんぼさつみょうごう。とくにょぜむりょうむへん。ふくとくしり。


無尽意菩薩。白仏言。
むじんにぼさつ。びゃくぶつごん。

世尊。観世音菩薩。云何遊此娑婆世界。云何而為衆生説法。方便之力。其事云何。
せそん。かんぜおんぼさつ。うんがゆうししゃばせかい。うんがにいしゅじょうせっぽう。ほうべんしりき。ごじうんが。


仏告無尽意菩薩。
ぶつごうむじんにぼさつ。

善男子。若有国土衆生。応以仏身得度者。観世音菩薩。即現仏身。而為説法。
ぜんなんし。にゃくうこくどしゅじょう。おういぶつしんとくどしゃ。かんぜおんぼさつ。そくげんぶっしん。にいせっぽう。

応以辟支仏身得度者。即現辟支仏身。而為説法。
にいせっぽう。おういびゃくしぶっしんとくどしゃ。そくげんびゃくしぶっしん。

応以声聞身得度者。即現声聞身。而為説法。
おういしょうもんしんとくどしゃ。そくげんしょうもんしん。にいせっぽう。


応以梵王身得度者。即現梵王身。而為説法。
おういぼんのうしんとくどしゃ。そくげんぼんのうしん。にいせっぽう。


応以帝釈身得度者。即現帝釈身。而為説法。
おういたいしゃくしんとくど。そくげんたいしゃくしん。にいせっぽう。


応以自在天身得度者。即現自在天身。而為説法。
おういじざいてんしんとくどしゃ。そくげんじざいてんしん。にいせっぽう。


応以大自在天身得度者。即現大自在天身。而為説法。
おういだいじざいてんしんとくどしゃ。そくげんだいじざいてんしん。にいせっぽう。


応以天大将軍身得度者。即現天大将軍身。而為説法。
おういてんがいしょうぐんしんとくどしゃ。そくげんてんだいしょうぐんしん。にいせっぽう。


応以毘沙門身得度者。即現毘沙門身。而為説法。
おういびしゃもんしんとくどしゃ。そくげんびしゃもんしん。にいせっぽう。


応以小王身得度者。即現小王身。而為説法。
おういしょうおうしんとくどしゃ。そくげんしょうおうしん。にいせっぽう。


応以長者身得度者。即現長者身。而為説法。
おういちょうじゃしんとくどしゃ。そくげんちょうじゃしん。にいせっぽう。


応以居士身得度者。即現居士身。而為説法。
おういこじしんとくどしゃ。そくげんこじしん。にいせっぽう。


応以宰官身得度者。即現宰官身。而為説法。
おういさいかんしんとくどしゃ。そくげんさいかんしん。にいせっぽう。


応以婆羅門身得度者。即現婆羅門身。而為説法。
おういばらもんとくどしゃ。そくげんばらもんしん。じいせっぽう。


応以比丘比丘尼優婆塞優婆夷身得度者。即現比丘比丘尼優婆塞優婆夷身。而為説法。
おういびくびくにうばそくうばいしんとくどしゃ。そくげんびくびくにうばそくうばいしん。にいせっぽう。

応以長者。居士。宰官。婆羅門。婦女身。得度者。即現婦女身。而為説法。
おういちょうじゃ。こじ。さいかん。ばらもん。ふにょしん。とくどしゃ。そくげんふにょしん。にいせっぽう。

応以童男。童女身得度者。即現童男。童女身。而為説法。
おういどうなん。どうにょしんとくどしゃ。そくげんどうなん。どうにょしん。にいせっぽう。

応以天。龍。夜叉。乾闥婆。阿修羅。迦楼羅。緊那羅。摩猴羅伽。人非人等身得度者。即皆現之。而為説法。
おういてんりゅう。やしゃ。けんだつば。あしゅら。かるら。きんなら。まごらか。にんぴにんとうしんとくどしゃ。そくかいげんし。にいせつぽう。

応以執金剛神。得度者。即現執金剛神。而為説法。
おういしゅうこんごうしん。とくどしゃ。そくげんしゅうこんごうしん。にいせっぽう。

無尽意。是観世音菩薩。成就如是功徳。以種種形。遊諸国土。度脱衆生。
むじんに。ぜかんせおんぼさつ。じょうじゅにょぜくどく。いしゅしゅぎょう。ゆうしょこくど。どだつしゅじょう。

是故汝等。応当一心供養観世音菩薩。
ぜこにょとう。おうとういっしんくようかんぜおんぼさつ。

是観世音菩薩摩訶薩。於怖畏急難之中。能施無畏。是故此娑婆世界。皆号之為施無畏者。
ぜかんぜおんぼさつまかさつ。おふいきゅうなんしちゅう。のうせむい。ぜこししゃばせかい。かいごうしいせむいしゃ。

無尽意菩薩。白仏言。世尊我今当供養観世音菩薩。
むじんにぼさつ。びゃくぶつごん。せそんがじんとうくようかんぜおんぼさつ。

即解頸衆宝珠瓔珞。価直百千両金。而以与之。作是言。仁者。受此法施。珍宝瓔珞。
そくげきょうしゅうほうじゅようらく。げじきひゃくせんりょうごん。にいよし。さくぜごん。にんしゃ。じゅしほうせ。ちんぽうようらく。

時観世音菩薩。不肯受之。
じかんぜおんぼさつ。ふこうじゅし。


無尽意。復白観世音菩薩言。仁者。愍我等故。受此瓔珞。
むじんに。ふびゃくかんぜおんぼさつごん。にんしゃ。みんがとうこ。じゅしようらく。


爾時仏告観世音菩薩。
にじぶつごうかんぜおんぼさつ。

当愍此無尽意菩薩。及四衆。天。龍。夜叉。乾闥婆。阿修羅。迦楼羅。緊那羅。摩猴羅伽。人非人等故。受是瓔珞。
とうみんしむじんにぼさつ。きゅうししゅう。てん。りゅう。やしゃ。けんだつば。あしゅら。かるら。きんなら。まごらか。にんぴにんとうこ。じゅぜようらく。


即時観世音菩薩。愍諸四衆。及於天。龍。人非人等。受其瓔珞。分作二分。一分奉釈迦牟尼仏。一分奉多宝仏塔。
そくじかんぜおんぼさつ。みんしょししゅう。ぎゅうおてん。りゅう。にんぴにんとう。じゅごようらく。ぶんさくにぶん。いちぶんぶしゃかむにぶつ。いちぶんぶたほうぶつとう。


無尽意。観世音菩薩。有如是自在神力。遊於娑婆世界。
むじんに。かんぜおんぼさつ。うにょぜじざいじんりき。
ゆうおしゃばせかい。

時無尽意菩薩。以偈問曰。
にじむじんにぼさつ。いげもんわつ。

無尽意よ、観世音菩薩は是の如き力有るをもって、若し衆生有りて観世音菩薩を恭敬礼拝せば、福、唐捐(むなし)からざらん。




是の故に衆生皆観世音菩薩の名号を受持すべし。



無尽意よ、若し人有りて六十二億恒河沙の菩薩の名字を受持し、復形を尽くすまで飲食・衣服・臥具・医薬を供養せば、汝が意に於て如何。



是の善男子・善女人の功徳多しや不や」と。


無尽意の言さく。「甚だ多し、世尊」と。


仏の言わく。「若し復人有りて観世音菩薩の名号を受持し、乃至一時も礼拝し供養せば、是の二人の福、正に等しくして異なること無けん。百千万億劫に於ても窮め尽くすべからず。



無尽意よ、観世音菩薩の名号を受持せば、是の如き無量無辺の福徳の利を得ん」と。


無尽意菩薩、仏に白して言さく。



「世尊、観世音菩薩は云何にしてか此の娑婆世界に遊ぶや、云何にしてか衆生の為に法を説くや、方便の力其の事云何」と。



仏、無尽意菩薩に告げたまわく。


「善男子、若し国土有りて衆生の応に仏身を以て度うことを得べき者には、観世音菩薩は即ち辟支仏の身を現じて為に法を説き、


応に辟支仏の身を以て度うことを得べき者には、即ち辟支仏の身を現じて為に法を説き、応に声聞の身を現じて為に法を説き、


応に声聞の身を以て度うことを得べき者には、即ち声聞の身を現じて為に法を説く。


応に梵王の身を以て度うことを得べき者には、即ち梵王の身を現じて為に法を説き、


応に帝釈の身を以て度うことを得べき者には、即ち帝釈の身を現じて為に法を説き、


応に自在天の身を以て度うことを得べき者には、即ち自在天の身を現じて為に法を説き、


応に大自在天の身を以て度うことを得べき者には、即ち大自在天の身を現じて為に法を説き、



応に天の大将軍の身を以て度うことを得べき者には、即ち天の大将軍の身を現じて為に法を説き、



応に毘沙門の身を以て度うことを得べき者には、即ち毘沙門の身を現じて為に法を説く。


応に小王の身を以て度うことを得べき者には、即ち小王の身を現じて為に法を説き、


応に長者の身を以て度うことを得べき者には、即ち長者の身を現じて為に法を説き、


応に居士の身を以て度うことを得べき者には、即ち居士の身を現じて為に法を説き、



応に宰官の身を以て度うことを得べき者には、即ち宰官の身を現じて為に法を説き、


応に婆羅門の身を以て度うことを得べき者には、即ち婆羅門の身を現じて為に法を説く。



応に比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷の身を以て度うことを得べき者には、即ち比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷の身を現じて為に法を説く。



応に長者・居士・宰官・婆羅門の婦女の身を以て度うことを得べき者には、即ち婦女の身を現じて為に法を説く。


応に童男・童女の身を以て度うことを得べき者には、即ち童男・童女の身を現じて為に法を説く。



応に天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩猴(正しくは目偏)羅伽・人非人等の身を以て度うことを得べき者には、即ち皆之を現じて為に法を説く。

応に執金剛神を以て度うことを得べき者には、即ち執金剛神を現じて為に法を説く。

無尽意よ、是の観世音菩薩は是の如き功徳を成就し、種々の形を以て諸の国土に遊び、衆生を度脱(どだつ)す。

是の故に汝等(なんだち)、応当(まさ)に一心に観世音菩薩を供養すべし。


是の観世音菩薩・摩訶薩は、怖畏急難(ふいきゅうなん)の中に於て能く無畏を施す。



無尽意菩薩、仏に白(もう)して言(もう)さく。世尊、我今当に観世音菩薩を供養すべし」と。


即ち頸の衆の宝珠の瓔珞の価直(あたい)百千両金なるを解きて、以て之を与え、是の言を作さく、「仁者、此の法施(ほせ)の珍宝の瓔珞を受けためえ」と。


時に観世音菩薩肯(あえ)て之を受けず。



無尽意、復観世音菩薩に白して言さく、「仁者、我等を愍(あわれ)むが故に此の瓔珞を受けたまえ」と。


爾(そ)の時、仏、観世音菩薩に告げたまわく。


「当に此の無尽意菩薩と及び四衆と天・龍・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩猴羅伽・人非人等を愍むが故に是の瓔珞を受くべし」と。


即時(そのとき)、観世音菩薩、諸の四衆及び天・龍・人非人等を愍みて其の瓔珞を受け、分かちて二分と作し、一分は釈迦牟尼仏に奉り、一分は多宝仏の塔に奉る。



「無尽意よ、観世音菩薩は是の如き自在神力有りて娑婆世界に遊ぶ」と。


爾の時、無尽意菩薩、偈を以て問うて白さく。

妙法蓮華経 観世音菩薩普門品[第二十五]偈

曹洞宗では、この偈から読経する。

世尊妙相具 せそんみょうそうぐ

我今重問彼 がこんじゅうもんぴ

仏子何因縁 ぶつしがいんねん

名為観世音 みょういかんぜおん

具足妙相尊 ぐそくみょうそうそん

偈答無尽意 げとうむじんに

汝聴観音行 にょちょうかんのんぎょう

善応諸方所 ぜんのうしょほうしょ

弘誓深如海 ぐぜいじんにょかい

歴劫不思議 りゃくごうふしぎ

侍多千億仏 じたせんおくぶつ

発大清浄願 ほつだいしょうじょうがん

我為汝略説 がいにょりゃくせつ

聞名及見身 もんみょうぎゅうけんしん

心念不空過 しんねんふくうか

能滅諸有苦 のうめつしょうく

仮使興害意 けしこうがいい

推落大火抗 すいらくだいかきょう

念彼観音力 ねんぴかんのんりき

火抗変成池 かきょうへんじょうち

或漂流巨海 わくひょうるうこかい

龍魚諸鬼難 りゅうぎょしょきなん

念彼観音力 ねんぴかんのんりき

波浪不能没 はろうふのうもつ

或在須弥峯 わくざいしゅみふ

為人所推堕 いにんしょすいだ

念彼観音力 ねんぴかんのんりき

如日虚空住 にょにちこくうじゅう

或彼悪人逐 わくひあくにんちく

堕落金剛山 だらくこんごうさん

念彼観音力 ねんぴかんのんりき

不能損一毛 ふのうそんいちもう

或値怨賊繞 わくちおんぞくにょう

各執刀加害 かくしゅうとうかがい

念彼観音力 ねんぴかんのんりき

咸即起慈心 げんそくきじしん

或遭王難苦 わくそうおうなんく

臨刑欲寿終 りんぎょうよくじゅしゅう

念彼観音力 ねんぴかんのんりき

刀尋段段壊 とうじんだんだんえ

或因禁枷鎖 わくしゅうきんかさ

手足被紐械 しゅそくひちゅうかい 

念彼観音力 ねんぴかんのんりき

釈然得解脱 しゃくねんとくげだつ

咒詛諸毒薬 しゅそしょどくやく

所欲害身者 しょよくがいしんしゃ

念彼観音力 ねんぴかんのんりき

還著於本人 げんじゃくおほんにん

或遇悪羅刹 わくぐうあくらせつ

毒龍諸鬼等 どくりゅうしょきとう

念彼観音力 ねんぴかのんりき

時悉不敢害 じしっぷかんがい

若悪獣囲繞 じゃくあくじゅういにょう

利牙爪可怖 りげそうかふ

念彼観音力 ねんぴかんのんりき

疾走無辺方 しっそうむへんぽう

元蛇及蝮蝎 がんじゃきゅうふくかつ 

気毒煙火燃 けどくえんかねん

念彼観音力 ねんぴかんのんりき

尋声自回去 じんしょうじえこう

雲雷鼓制電 うんらいくせいでん 

降雹樹大雨 ごうぱくじゅだいう

念彼観音力 ねんぴかんのんりき

応時得消散 おうじとくしょうさん

衆生被困厄 しゅじょうひこんやく

無量苦逼身 むりょうくひっしん

観音妙智力 かんのんみょうちりき

能救世間苦 のうぐせけんく

具足神通力 ぐそくじんつうりき

広修智方便 こうしゅうちほうべん

十方諸国土 じっぽうしゅこくど

無刹不現身 むせつふげんしん

種種諸悪趣 しゅしゅしょあくしゅ

地獄鬼畜生 じごくきちくしょう

生老病死苦 しょうろうびょうしく

以漸悉令滅 いぜんしつりょうめつ

真観清浄観 しんかんしょうじょうかん

広大智慧観 こうだいちえかん

悲観及慈観 ひかんぎゅうじかん

常願常瞻仰 じょうがんじょうせんごう

無垢清浄光 むくしょうじょうこう

慧日破諸闇 えにちはしょあん

能伏災風火 のうぶくさいふうか

普明照世間 ふみょうしょうせけん

悲体戒雷震 ひたいかいらいしん

慈意妙大雲 じいみょうだいうん

樹甘露法雨 じゅかんろほうう

滅除煩悩焔 めつじょぼんのうえん

諍訟経官処 じょうしょうきょうかんしょ

怖畏軍陣中 ふいぐんじんちゅう

念彼観音力 ねんぴかんのんりき

衆怨悉退散 しゅうおんしつたいさん

妙音観世音 みょうおんかんぜおん

梵音海潮音 ぼんのんかいちょうおん

勝彼世間音 しょうひせけんのん

是故須常念 ぜこすじょうねん

念念勿生疑 ねんねんもっしょうぎ

観世音浄聖 かんぜおんじょうしょう

於苦悩死厄 おくのうしやく

能為作依怙 のういさえこ

具一切功徳 ぐいっさいくどく

慈眼視衆生 じげんじしゅじょう

福聚海無量 ふくじゅかいむりょう

是故応頂礼 ぜこおうちょうらい

爾時。持地菩薩。従座起。前白仏言。
にじ。じじぼさつ。じゅうざき。ぜんびゃくぶつごん。

世尊。若有衆生。聞是観世音菩薩品。自在之業。普門示現。神通力者。当知是人。功徳不少。
せそん。にゃくうしゅじょう。もんぜかんぜおんぼさつ。じざいしごう。ふもんじげん。じんつうりきしゃ。とうちぜにん。くどくふしょう。

仏説是普門品時。衆中八万四千衆生。皆発無等等。阿耨多羅三貌三菩提心。
ぶっせつぜふもんほんじ。しゅうちゅうはちまんしせんしゅじょう。かいほつむとうとう。あのくたらさんみゃくさんぼだいしん。

「世尊は妙相(みょうそう)具(そな)わりたまえり

我今重ねて彼を問いたてまつる

仏子、何の因縁ありてか

名けて観世音と為るや」と

妙相を具足したまえる事

偈をもって無尽意に答えたまわく

「汝、観音の行の

善く諸(もろもろ)の方所(ほうじょ)に応ずるを聴け

弘誓(ぐせい)の深きこと海の如く
※弘誓:弘く一切衆生を済度して仏果を得させようとする仏・菩薩の広大な請願。
劫(こう)を歴(ふ)とも思議(しぎ)しえざらん
※歴劫不思議(りゃくごうふしぎ):永久に知りがたいこと。永久に分らぬこと。
多千億(たせんおく)の仏に侍(つか)えて

大清浄(だいしょうじょう)の願を発(おこ)せり

我汝が為に略して説かん

名を聞き及び身を見


心に念じて空しく過ごさざれば

能く諸有(もろもろ)の苦を滅す

仮使(たとい)害の意を興して

大いなる火坑(かきょう)に推し落とされんに

彼の観音の力を念ぜば


火坑変じて池と成らん

或いは巨海に漂流して

龍魚諸鬼の難あらんに


彼の観音の力を念ぜば

波浪も没すること能わじ

或いは須弥の峯に在りて
※須弥:須弥山(しゅみせん)の略。梵語、修迷楼・蘇迷慮など、妙高山・妙光山の意。仏教の世界説で、世界の中心に聳え立つという高山。
人に推し堕とされんに

彼の観音の力を念ぜば

日の如くに虚空に住らん


或いは悪人に逐われて

金剛山より堕落せんに

彼の観音の力を念ぜば


一毛をも損ずること能わじ

或いは怨賊の繞(かこ)みて

各、刀を執りて害を加うるに値(あわ)んに


彼の観音の力を念ぜば

咸(ことごと)く即(ただち)に慈心を起こさん

或いは王難の苦に遭うて

刑せらるるに臨み寿(いのち)終らんと欲んに


彼の観音の力を念ぜば

刀(つるぎ)尋(にわか)に段々に壊れなん

或いは枷鎖(かさ)に囚禁(しゅうきん)せられ


手足に紐(正しくは木偏)械を被らんに

彼の観音の力を念ぜば

釈然として解脱することを得ん

咒詛(しゅそ)諸の毒薬に


身を害せんと欲られん者

彼の観音の力を念ぜば

還りて本人に著きなん


或いは悪羅刹

毒龍諸鬼等に遭わんに

彼の観音の力を念ぜば

時に悉く敢えて害せじ


若くは悪獣に囲繞(いじょう)せられて

利(と)き牙爪(げそう)の怖るべきあらんに

彼の観音の力を念ぜば


疾(と)く無辺の方に走りなん

元(正しくは虫偏)蛇(がんじゃ)及び蝮蝎

気毒(けどく)煙火の燃ゆるがごとくならんに

彼の観音の力を念ぜば


声に尋(つ)いで自ら回り去らん

雲雷鼓制(正しくは制の下に手)電し

雹(あられ)を降らし大雨を樹(正しくはサンズイ)(そそ)がんに


彼の観音の力を念ぜば

応時(ただち)に消散することを得ん

衆生、困厄(こんやく)を被りて

無量の苦、身を逼(せ)めんに


観音妙智の力

能く世間の苦を救う

神通力を具足し


広く智の方便を修して

十方の諸の国土に

刹(くに)として身を現ぜざること無し

種々の諸の悪趣


地獄鬼畜生

生老病死の苦

以て漸く悉く滅せしむ


真観、清浄観

広大智慧観

悲観及び慈観あり

常に願い常に瞻仰(せんごう)すべし


無垢清浄の光ありて

慧日(えにち)は諸の闇を破し

能く災いの風火を伏して


普く明らかに世間を照らす

悲体の戒、雷震(らいしん)のごとく

慈意は妙なる大雲のごとく

甘露の法雨を樹(そそ)ぎ


煩悩の焔を滅除す

諍訟して官処を経

軍陣の中に怖畏せんに


彼の観音の力を念ぜば

衆の怨(あだ)悉く退散せん

妙音、観世音

梵音(ぼんのん)、海潮音


勝彼(しょうひ)世間音(せけんおん)あり

是の故に須(すべか)らく常に念ずべし

念念に疑を生ずること勿れ


観世音浄聖は

苦悩死厄(しやく)に於て

能く為に依怙と作(な)れり

一切の功徳を具して


慈眼をもって衆生を視る

福聚(ふくじゅ)の海無量なり

是の故に応に頂礼すべし」と


爾(そ)の時、持地(じじ)菩薩、即ち座より起ちて、仏に白して言さく。


「世尊、若し衆生有りて是の観世音菩薩品の自在の業・普門示現の神通力を聞かん者は、当に知るべし、是の人の功徳少からじ」と。


仏、是の普門品を説きたまう時、衆中の八万四千の衆生は皆無等等の阿耨多羅三貌三菩提の心を発しき。